女「あの、顔色悪いけど大丈夫ですか?」 男「・・・え?」

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kou

1: :2015/07/26(日) 17:42:14.90 ID:

女「もう講義終わりましたよ?」 

男「あ、ああ」 

・・・外を見ていた。 

空はいつのまにか茜色をしていた。 

時計を見ると5時近い。 

講義はとっくに終わっていたようだ。 

3階41講義室に残っているのは、オレと、オレに話しかけてきた女だけだった。 

男「あ、すみません。ちょっとボーっとしてました。もう帰るんで」 

女「あの・・・余計なお世話かもしれませんけど、そのまま外にはいかない方がいいと思いますよ」 

男「えっ?」 

なぜだか分からないが、シャツの襟が濡れていた。 

男「・・・すみません」 

女「あの・・・結構前から気になってたんです。全然講義聞いてないみたいですし、あまりに・・」 

男「いえ、大したことじゃないんで大丈夫です」 

2: :2015/07/26(日) 17:43:12.92 ID:

そう言うとオレは、机に出しっぱなしになっていた経済原論の教科書を鞄に仕舞った。 

外からは他の学生たちの声が聞こえる。 

なんだかいつもより騒がしいな、と思った。 

男「じゃあオレはこれで」 

女「待ってください」 

男「?」 

女「あの・・・初対面の人にいきなりこんなこと言うの失礼かもしれませんが、もしよかったらあなたがいつも外を見ている理由を教えてください」 

男「・・・」 

女「誰かに話すことで、少しは気持ちが晴れることだってあると思います」 

男「あなたには・・関係のないことですから」 

女「そうかもしれません・・・でもあなたの尋常じゃない様子が気になって私も講義に集中できないんです。服が乾くまででいいですから」 

男「・・・」 

確かに初対面の人間にしては、他人の領域に踏み込みすぎだと思った。 

だが、その真剣な表情は、言葉とは裏腹に、見ず知らずの人間を本当に心配しているようにも見えた。 

・・・人の好意は素直に受けるべきだと思った。 

そういう訳でオレは、本当に気まぐれに、名前も知らない女に、おそらくは面白くもない話をすることにした。 

男「長くなるけどいいですか?」 

女「はい」 

3: :2015/07/26(日) 17:43:48.32 ID:
*** 

*** 

ピンポンパンポーン 

校内放送『2年C組の男君、昼休みに生徒会室に来てください』  

「おーい、お前呼ばれてるぞ」 

男「はぁー・・なんだよ。飯食う時間無くなるじゃん」 

「じゃあオレら今日は先購買行ってるからな」 

男「あー・・じゃあさなんかついでに買っといてくんねー?」 

「しょうがねーな。何がいいんだ?」 

男「甘くないのなら何でもいい」 

「オッケー」 

コンコン 

男「しつれいしまーす」 
ガラガラ 

「ん?君誰?」 

男「なんか校内放送でここに来いって言われたんですけど」 

「?誰か呼んだの?」 

4: :2015/07/26(日) 17:44:18.27 ID:
女「あ、会長。私が呼びました」 

「あ、女さん。どうしたの?」 

女「彼のノートを拾ったので」 

「そうだったんだ。あ、3年生午後プールだから僕たちもう行くけど、任せていい?」 

女「はい。お疲れ様です」 

ガラガラ・・・バタン 

男「あ、ノート拾ってくれたんですか。すいません」 

女「・・ええ。コレ、返します」 

男「どーも。じゃあオレもう行くんで」 

女「ちょっと待ちなさい」 

男「?」 

女「あなたに言っておきたいことが3つあります」 

男「は?」 

5: :2015/07/26(日) 17:44:51.98 ID:
女「まず、名前はノートの表面に書きなさい。中に書いたら内容を確認しなければ誰のだかわかりません」 

女「次に、ノートに落書きをするのはやめなさい。ノートは勉強のためにあるものです」 

女「最後に、もっときれいな字で書きなさい。復習するとき自分で書いた字が読めないんじゃないのかしら?」 

男「・・・・は?余計なお世話だし」 

女「それともう一個。部屋に入る時のノックは3回、あるいは4回です。2回は“入っていますか?”ですから」 

男「・・・・うるせーな」 

女「あなたの将来のために言っているんだけど?」 

男「ッチ」 

ガラガラ・・・バタン! 

6: :2015/07/26(日) 17:45:24.50 ID:
男「・・・」 

「お、早かったな」 

男「あーすまん」 

「ほれ、サンドイッチ」 

男「サンキュー・・・・はぁムカつくなー」 

「なんかあったのか?」 

男「あー・・・生徒会の女が超うざかった」 

「マジ?3年?」 

男「いや、リボン緑だから2年だな」 

「2年で生徒会の女ってA組の女さんか?」 

男「知らねーよ。名前なんて」 

「眼鏡かけてて髪長い奴」 

男「あー・・たぶんそれだわ」 

「ウザいってどんな感じだったんだ?」 

男「良く知りもしねーオレのノートの書き方に文句言いやがった」 

「意味わからん」 

男「いや、オレも分かんねーよ」 

7: :2015/07/26(日) 17:45:57.71 ID:
「あれじゃね?セーリで機嫌悪かったとか」 

男「はー、キモイわ」 

「はは・・相当イラついてんなー」 

男「・・・」 

「ま、女さんって車椅子だし、虫の居所悪いこともあるんだろ」 

男「ん?車椅子?」 

「あれ?車椅子乗ってなかった?」 

男「いや、普通に椅子座ってたけど」 

「そうか?まあいいや。俺食いおわったからちょっとフットサルしてくるわ」 

男「ああ、俺も食いおわったら行く」 

「おー」 

サンドイッチを齧りながら、さっきの生徒会室の様子を思い出した。 

そう言えば、部屋の隅に車椅子あったな。 

車椅子に乗ってる人にさっきの言い方は無かったかな、とも思った。 

が、あれだけ初対面の人間に悪態つける奴に、同情はいらないと、オレはなんとなく納得した。 

12: :2015/07/26(日) 20:43:56.55 ID:
―――――ある日の朝。 

男「朝から集会ウゼー」 

「ねみーよな」 

男「せめて椅子用意しろよな。そしたら眠れるのに」 

「そうだな、てかお前立ったまま寝てることあるだろ」 

男「マジ?ばれてた?」 

「はははっ」 

『・・・これで生徒集会を終わります』 

「おい、教室行こうぜ」 

男「ああ・・・・」 

「ん?どうした?・・・・ああ。ほら、あれだろ。A組の。な、車椅子だろ?」 

男「ああ・・・行こうぜ」 

「おう」 

壇上の生徒会役員たちの中に、一人だけ覚束ない足取りの女生徒がいた。 

しかしその女生徒は、誰の手も借りず、しかしゆっくりと壇下に置いてある車椅子まで歩を進めていた。 

長い黒髪が、しっかりと伸びた背筋を覆いながら静かに揺れ動いていた。 

凛としていた。 

13: :2015/07/26(日) 20:44:43.15 ID:
「おーい男」 

男「なんすかキャプテン」 

「明日の放課後予算会議あるんだけどさ、悪いんだけどお前行ってくれない?」 

男「えーマジっすか?オレ何していいか分かんないすよ」 

「ただ座ってるだけでいいから。行かないと予算減らされるんだよ」 

男「はー了解っす」 

「ワリィな」 

*** 

「それでは、予算会議を始めます。まず昨年度の資料をご覧ください・・」 

男(はー・・眠ぃ) 

男「・・・ZZZ」 

「では、次は会計から今年度予算配分の報告です」 

女「はい、会計の女です・・・報告の前に。サッカー部の男さん、起きなさい!」 

男「おわっ?!」 

女「会議中は寝ないように。では、報告です」 

「くすくす」 

男「・・・チッ」 

「それでは、これで予算会議を終わります。お疲れ様でした」 

14: :2015/07/26(日) 20:45:18.97 ID:
男「・・・おい」 

女「何?私に用?」 

男「何?じゃねーよ。お前さ、オレに恨みでもあんの?」 

女「は?何言ってるの?さっきのはあなたが悪いんでしょ」 

男「だからってあの場で怒鳴ることねーだろ」 

女「あそこで起きなければ、あの後の会議聞いてなかったでしょ?」 

男「チッ・・・うるせー奴」 

女「あなたね、もうちょっと真面目になりなさい」 

男「だから、そういうとこがウゼーんだよ」 

女「・・いい加減にそこ退いてくれない?あなたがそこにいると、私手をつくところが無くて立ち上がれないの」 

男「・・・チッ」 
すっ 

女「あなたの生活態度を見てると、いくらでも文句を言いたくなってしまうから、私はこれで戻ります。さようなら」 

男「・・・」 

15: :2015/07/26(日) 20:46:00.56 ID:
「男ーこの前は予算会議出てくれてありがとな」 

男「キャプテン・・オレ、今後あの会議には出たくないです」 

「ん?何かあった?予算別に減ってないと思うけど」 

男「なんかスゲームカつく奴いるんで」 

「??まあいいや。てか予算会議は年に2回しかないから。次回は俺が行くよ」 

男「そうしてもらえると助かります」 

「おし、じゃあランニングから始めるか」 

「うーっす!」 

男(かったりーな) 

「イチニ、ソーレ!!イチニ、ソーレ・・・」 

男「はっ・・はっ・・・・(たりーからゆっくりいこう)」 

男「・・・・・ん?」 

男(あの窓って確か生徒会室か・・・何覗いてやがるんだよ、あの女) 

女「・・・・ふん」ぷいっ 

男「・・チッ」 

16: :2015/07/26(日) 20:46:36.48 ID:
「最近お前不機嫌だなー」 

男「そう見えるか?」 

「見えるわー」 

男「A組の女がムカつく。とにかくムカつく」 

「ん?あれ以来なんか絡みあったのか?」 

男「部活のとき、生徒会室からオレの事見てやがる」 

「は?なにそれ。ラブコメかよ」 

男「は、死ねよ?」 

「おい、冗談だよ。てかなんでお前の事見てるの?」 

男「・・・知らねーよ」 

「てかさ、別にお前の事見てる訳じゃないんじゃないのか?」 

男「は?」 

「女さんって足悪いんだろ?よく知らねーけど」 

男「・・ああ」 

「運動できねーから、運動部のこと見てるんじゃないのか」 

男「・・・」 

17: :2015/07/26(日) 20:47:10.13 ID:
―――――ある日の放課後。 

女「・・・・」ぼーっ 

コンコンコン 

女「あ、ハイどうぞ」 

ガラガラ 
男「・・・」 

女「わっ!」 

男「・・あ?」 

女「・・なんでもないわ。生徒会に何か用ですか?」 

男「いや、別に」 

女「?用がないならあなたが来る必要はないですよ」 

男「お前さ、なんでいつも放課後に外見てんの?」 

女「・・別に見ていないわ」 

男「嘘つけよ。じゃあなんで窓際に椅子置いてんだよ」 

女「・・別にいいでしょう。あなたには関係ありません」 

18: :2015/07/26(日) 20:47:43.67 ID:
男「関係はないけど、練習してるときチラチラ見られると気が散るんだよ」 

女「そんな事を言うなら、もっとマジメに練習に取り組んだらどうなの?あなた、ランニングするとき明らかに手を抜いてるでしょう」 

男「やっぱり見てんじゃねーか」 

女「そ・・それに今日はどうしたの?練習をさぼってこんなとこに来ていていいの?」 

男「昨日の練習で足突き指したんだよ」 

女「あ・・・そうなの。ごめんなさい」 

男「・・・・はぁ」 

女「・・・とりあえずドアの前にいつまでも立っていないで、椅子に座ったらどうなの・・・足、痛いんでしょう?」 

男「・・・じゃあ」 
がたっ 

女「・・・お茶でも入れますか?」 

男「あ、わりーよ・・てかお前も・・その、動くのめんどうだろ」 

女「大丈夫よ。歩けるときは歩くことにしてるの」 

そう言うと女は、机に手をついて立ち上がり、ゆっくりとポットと急須の方に向かって歩き出した。 

19: :2015/07/26(日) 20:48:19.55 ID:
女「どうぞ」 

男「あ、どうも」 
ずずっ 

女「・・・」 
てく・・てく・・てく 

男「・・・」 
がしっ 

女「何をしているの?」 

男「椅子おさえてるから、座れよ」 

女「別にそんな事してもらわなくても自分で座れますから」 

男「危なっかしくて見てらんねーんだよ。てか、目の前で転ばれたら困る」 

女「・・・どうも」 
とさっ 

20: :2015/07/26(日) 20:48:52.34 ID:
男「あー・・・」 

女「何?」 

男「お前さ、運動したいから校庭見てるのか?」 

女「違うわ」 

男「・・・」 

女「あなたみたいに、運動できるのに、真面目にやらない人を見ているとイライラするの」 

男「・・・悪かったな」 

女「・・・私も悪かったわ。これからはあまり外を見ないようにします」 

男「いや・・別にそんなことは言ってねーよ」 

女「・・・」 

男「・・・」 

女「同情とか、やめてくれるかしら」 

男「は?」 

女「満足に歩けないからって、私は別に困っていないわ」 

21: :2015/07/26(日) 20:49:41.72 ID:
男「・・・お前さ、ここ3階だけど、帰る時どうやって階段降りてんの?」 

女「時間をかければ、降りられるから」 

男「それは見てれば分かるけど、その車椅子どうしてるんだよ。持って階段降りられないだろ」 

女「・・・母が迎えに来てくれるから」 

男「・・・じゃあ迎え来るまでここにいるってわけか」 

女「そうよ」 

男「迎え、何時くらいなんだ?」 

女「なんでそんな事を聞くの?」 

男「お前が、いつも部活終わるまで校庭見てるから、ずいぶん遅くまでいるなって思ってたんだよ」 


女「・・・6時半ごろよ」 

男「そうか。だから部活終わりまで見てるんだな」 

女「・・・悪かったわね」 

22: :2015/07/26(日) 20:50:20.43 ID:
男「・・・突き指治るまでヒマだから、階段降りるの手伝ってやるよ」 

女「は?どういう風の吹き回しなの?」 

男「その代わり、治るまでここからサッカー部見させてくれよ」 

女「どういう事?見学ならグラウンドでするべきじゃないの?」 

男「練習やらねー奴がグラウンドにいると邪魔なんだよ。それに、さっき気づいたんだけど、ここからだと全体の動き見えるからな」 

女「・・・そう。真面目な理由なら別にいいと思うけど。一応明日、会長に許可を取りますから」 

男「ああ」 

** 

男「そろそろ時間だろ」 

女「・・ええ」 

男「じゃあ行くか」 

女「あ、湯呑」 

男「あ、ワリィ」 
ジャー・・ガチャガチャ 

女「・・・あなたが洗う事は無いのに」 

男「いや、オレが使ったんだからオレが洗うよ」 

女「・・・」 

23: :2015/07/26(日) 20:50:57.01 ID:
男「大丈夫か?」 

女「手を貸す必要はないわ」 

男「・・・わかった。転ぶなよ。オレは車椅子持って先に降りるわ」 

女「ええ」 

男「・・・」 

女「・・なんで、私の前にいるの?下にいればいいじゃない」 

男「別に」 

女「・・転ばないから大丈夫よ。今まで一度も転んだことないわ」 

男「へいへい」 
タッタッタ 

女「・・・・お待たせ」 

男「・・おう」 

女「車椅子、押さえてもらわなくても、ちゃんと座れるわ」 

男「お前さ、人の好意は素直に受け取れよ」 

女「・・・それは、私が普通に歩ける人だったとしても同じことするの?私が教室で座る時、いちいち椅子を引くの?」 

男「お前、結構めんどくさい奴だな」 

24: :2015/07/26(日) 20:51:33.35 ID:
女「なっ!」 

男「体調悪い時は、ソイツの事助けんのは普通だろ」 

女「・・・そうかもしれないけど」 

男「お前が、出来るだけ人の手借りたくないってのは、見てりゃ分かるよ。だけど、座る時とか転ばないように支えることで、別にお前の運動量は減らないだろ?余計な事故が起こらないようにしてるだけなんだから、それくらい別にいーだろーが」 

女「・・・・意外にも、理論的なのね」 

男「なんで一々そういう言い方すんだよ」 

女「・・・ごめんなさい」 

男(だからって素直に謝るなよ) 

女「分かったわ・・・確かにあなたの言う通りだと思います。ありがとう」 

男「お、おう」 

女「・・じゃあ座ります」 
とす 

男「・・・・あー生徒会室の鍵、返すんじゃねーの?」 

女「ええ。返してきます」 

男「おう」 

女「・・・なんであなたもついてくるの?」 

男「はぁ・・・例えば、ダチと2人でだべってて、そいつが職員室にちょっと寄る用事あったら、ついて行くのくらいフツーだろ」 

女「・・・」 

25: :2015/07/26(日) 20:52:13.15 ID:
女「・・・今日はありがとうございました」 

男「別に畏まって礼とか言わないでいいんだけど」 

女「そう」 

男「そういや、迎えまだ来てないのか?」 

女「ええ。うち、母も働いてるから、仕事帰りに寄ってくれるの」 

男「車?」 

女「そうよ・・あ、あの近づいてくる車よ」 

男「あ、そ。じゃあ俺も帰るわ。明日も放課後行かせてもらうから、会長さんに聞いといてくれよ」 

女「あ・・はい」 

ブロロロ・・キッ 

女母「あら?今日はどうしたの?」 

女「えっと、友達が送ってくれたの」 

女母「あら!お礼言わなきゃ。生徒会の方?」 

女「いえ・・もう帰ってしまったわ」 

女母「そうなの・・まあとにかく帰りましょう」 

女「うん」 

30: :2015/07/27(月) 00:40:16.66 ID:
ハッピーな展開がいいな
31: :2015/07/27(月) 10:41:35.80 ID:
確かに
33: :2015/07/27(月) 22:18:04.27 ID:
*** 

コンコンコン 

女「どうぞ」 

ガラガラガラ 
男「・・・」 

女「・・なんですか?」 

男「いや・・昨日の話。会長さんに聞いてくれたんじゃねーのか?」 

女「ええ、その話なら、別に良いという事です。ただし、会議のある金曜はダメです」 

男「そ。そりゃどうも。じゃあおじゃまします」 

女「はい」 
がた 

てく・・てく・・てく 

かちゃ 
トポポポポ・・ 

女「お茶、どうぞ」 

男「あ、すまん・・・てか別に毎回お茶入れてくれなくてもいいけどな」 

女「人の好意は素直に受け取ったらどうなの?」 

男「・・・ッチ・・お前やっぱウザいわ」 

女「お返しよ」くすくす 

男「・・・」 

34: :2015/07/27(月) 22:18:51.95 ID:
男「・・・あっバカ、オフサイドラインこえてるだろ・・」 

女「・・・」 

男「・・・ん、そう言えばお前は外見ないのか?」 

女「なんであなたといっしょに、並んで窓から顔を出さなければいけないの?」 

男「・・・ホント一々嫌味言う奴だな」 

女「・・・」 

男(あー・・・そっか。オレがここいるとコイツの習慣を妨害しちまうのか・・?) 

女「私は今日は勉強しているから、気にしないでいいわ」 

男「勉強?期末まで3週間以上あるだろ?」 

女「定期試験の直前にしか勉強しないあなたとは違うの」 

男「うぜ・・・ん?お前マジで何の勉強してんの?学校の勉強じゃないだろ、ソレ」 

女「資格の勉強をしているのよ・・のぞき込まないでくれる?」 

男「資格?なんの?」 

女「・・・アナタには関係ないでしょ?」 

男「まあそうだけど、気になったこと聞くくらい良いだろ」 

女「・・・公認会計士の資格を取りたいの」 

男「会計士?それって大学卒業後とかに取るもんじゃないのか?」 

35: :2015/07/27(月) 22:19:22.65 ID:
女「・・・別に受験資格は大卒ではないわ」 

男「でも、高校生が取れるもんなのか?確かすげー難しいやつだろ?大学行ってからでも」 

女「私は・・・あなたと違って部活もしていないし時間があるの。そ・・それに、私のことで家族に迷惑をかけている。だから早く独り立ちしたいの」 

男「・・・そっか。まあ、がんばれよ」 

女「・・・あ、あなたこそこの部屋使わせてあげてるんだから、ちゃんと自分のすべきことをしなさい」 

男「いや、今日の練習もう終わりみたいだ」 

女「・・・そう」 

男「さて」 
すくっ 

ジャー・・ガチャガチャ 

男「もう時間だし、お前も帰るしたくしろよ」 

女「・・・ええ」 

女「じゃあ職員室に鍵返してくるから」 

男「もう返してきたぞ。お前が階段降りてる間に」 

女「なっ・・余計な事を!」 

男「時間短縮だよ・・・つーかアレ、お前の家の車だろ?親待たせるの悪いだろ?」 

女「・・・」 

男「じゃあ俺帰るわ」 

女「待って!」 

男「あ?」 

女「あ・・ありがとう」 

男「あ、おう」 

36: :2015/07/27(月) 22:19:58.06 ID:
コンコンコン 

女「どうぞ」 

ガラガラ 
男「おす」 

女「・・こんにちは。今日はずいぶん遅かったのねもう6時よ」 

男「あ、今日はお茶はいいぞ」 

女「?」 

男「今日から、試験2週間前だからもう練習ねーよ。結局突き指治んなかったし、復帰は試験後だ」 

女「あ・・そう言えばそうね」 

男「窓から外見てたんじゃないのか?」 

女「今日は勉強してたから」 

男「あー・・・そういう訳だからもう放課後ここから外見ねーから。試験後はもう来ねーよ」 

女「そう」 

男「あー・・いままでどうもありがとうございました」 

女「どういたしまして」 

男「・・じゃあ帰るぞ。支度しろよ」 

女「うん・・・あ、別に今日はあなたに送ってもらう必要はないんじゃないのかしら」 

男「まあ、そうかもしれないけど、来ちまったから今日は送ってやるよ」 

女「別にそんな!・・・・・・いえ、好意は素直に受け取るわ。ありがとう」 

男「あ・・おう」 

37: :2015/07/27(月) 22:20:27.68 ID:
** 

ガラガラ 
女「・・・よいしょ」 

ガチャ 

女「・・・」 

男「・・・」 

女「あなた、毎日階段のところで待っているのやめてくれないかしら。別に生徒会室に来てないのだから、あなたにそうしてもらう義理は無いわ」 

男「偶然だよ、グーゼン。てか人の好意はす」 

女「ちょっと黙りなさい」 

男「・・・なんだよ」 

女「来週の月曜日で試験1週間前なんだけど、あなた毎日この時間まで学校に残って、ちゃんと勉強してるの?」 

男「・・・してるよ。うるせえな」 

女「どこで?」 

男「あー・・図書室」 

女「・・・そう。じゃあ来週の月曜からは、私も放課後図書室で勉強することにします」 

男「げ」 

女「なに?」 

男「・・・ッチ。なんでもねーよ」 

38: :2015/07/27(月) 22:21:07.62 ID:
** 

女「・・・やっぱり全然勉強進んでなかったわね」 

男「うるせーな、今日からちゃんとやるつもりだからいいんだよ」 

女「やらない人はみんなそう言うのよ。あなたの苦手な歴史科目は重点的にやるわよ」 

男「お前、なんでオレが歴史苦手って・・ああ、ノート見たからか・・・じゃなくて!なんでお前がオレに勉強教える感じになってるんだよ!」 

女「静かにしなさい。ここ、図書館よ」 

男「・・クソが」 

女「・・・部活禁止期間の今、あなたに階段を降りる手助けをしてもらう理由がないわ。だから、そのお礼に勉強を教えます」 

男「・・・そうかよ」 

女「・・まずあなたが授業中寝てて板書を写してないところを、私のノートから写しなさい。結局定期試験は授業で先生が言ったところから出るのだから、ノートをちゃんととってそれを覚えるだけで7割は取れるものよ」 

男「つーか、なんでオレが授業中寝てること知ってるんだよ」 

女「カンよ。やっぱり寝てたのね」 

男「・・・はぁ・・・」 

女「とにかく、今日は、全科目ノート書いてないとこ写し終わりなさい」 

男「まじかよ・・・」 

39: :2015/07/27(月) 22:21:51.57 ID:
女が差し出したノートに並んだ文字は、まるで教科書の印刷のように整っていた。 

しかも板書だけでなく、授業中に教師が口頭で言ったであろうこともメモされていた。 

いわゆる優等生ノートというやつだ。 

足が不自由で、体育も部活も出られない。 

そういう環境なら、確かにこうなるしかないのかもしれないな、とオレは妙な納得をした。 

写す作業だけだから、そんな余計な事を考えながら手を動かしていた。 

気が付くと、夏の近い空も西日が傾きかけていた。 

ガラガラ 

女母「・・あら」 

女「あ」 

男「ん?」 

女母「まだお勉強中だったかな?」 

女「えっと・・」 

男「いや、もう終わる・・・ってか、お前の母さん?」 

女「うん」 

女母「あなた男君かしら?」 

男「あ、はい」 

女母「やっぱり。最近うちの子がお世話になってるみたいで、お礼言わなきゃと思ってたのよ。いつもうちの子を助けてくれてありがとうね」 

男「あ、イヤ別に。オレも色々世話になったんで、そのお礼みたいなもんです」 

女「えっと、終わったの?」 

男「あ、おう」 

女「じゃ、じゃあ帰りましょう。もう遅いし。お母さんも、図書館であまりうるさくしないで」 

女母「あら、そうね」 

40: :2015/07/27(月) 22:22:22.34 ID:
男「よいしょ・・じゃあオレ階段の下にいるから」 

女「・・・うん」 

男「あ、鍵」 

女「あ、うん。ありがとう」 

女母「大丈夫?」 

女「うん。一人で降りられるから」 

女母「うん」 

男「じゃあ、俺帰るから」 

女「あ、はい。さようなら」 

女母「女ちゃん」 

女「なに?」 

女母「お勉強教えてるの?」 

女「うん」 

女母「そうなんだ」 

女「?」 

女母「・・・じゃあうちも帰りましょう。車乗って」 

女「うん」 

41: :2015/07/27(月) 22:22:55.74 ID:
男「・・・」 
カリカリ・・ 

女「ねえ」 

男「・・ん?」 

女「今日は金曜日なんだけど」 

男「知ってるけど」 

女「あなた、土曜はどうするつもりなの?」 

男「どうするって、何が?」 

女「世界史も日本史も、覚えきれてないでしょう?テストは月曜からなんだけど、このままでは高得点はとれないわよ」 

男「いや・・オレ別に高得点目指してないんだけど。赤点じゃなければそれでいいし。ていうか、お前が心配することじゃないだろ」 

女「ここまでちゃんと教えたんだから、高得点とってもらわなきゃ私の気分が悪いわ」 

男「なんだよその理屈。てか、お前のせいで今までにないくらいテスト勉強させられてるから、それなりに高得点はとれんだろ」 

女「ダメよ。歴史系科目に明らかに穴があるでしょ」 

男「赤点じゃなけりゃいーだろーが」 

女「ダメよ。だから・・・・土日はうちで勉強しましょう」 

42: :2015/07/27(月) 22:23:32.68 ID:
男「は?」 

女「家の場所分からないと思うから、明日はお母さんがあなたを迎えに行きます」 

男「は?・・なに?マジで意味分かんねーんだけど?」 

女「連絡を取り合うため、携帯の番号を教えなさい」 

男「いや、お前・・・ていうか、そこまでしてもらう義理は無い」 

女「・・・・お母さんに、あなたに階段を降りることを手伝ってもらっていたことを言ったら、お礼がしたいから家に連れてきなさいと言って聞かないのよ・・・」 

男「・・・・・・はー」 

オレと目を合わせない女の顔からは、どこか困ったようにうつむいた表情が見て取れた。 

さっきの強引な物言いも、おそらくは母親からの言づけを直接オレに言うのがもどかしかったからだろう。 

もう充分赤点回避の可能性を感じていたオレからすれば、迷惑極まりない話だったが、女の母親の気持ちも分からないでもない。 

それに、ここでオレが行かなかったら、こいつの母親は自分の娘が学校内で友人にどう思われているか、という点について、良からぬ勘違いをするかもしれない。 

なんとなくそれは嫌だったので、オレは諦めのため息をついた。 

男「赤外線。オレが送信でいいか?」 

女「・・・へ?」 

男「ケータイだよ。連絡先交換すんだろ?」 

女「あ、うん」 

男「明日の時間は、家帰ってから連絡するんでいいか?」 

女「・・・ええ」 

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